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夢に咲く花
 マルソ君は考えた。

「俺の夢はなんだろう」

 ずいぶん根本的なところまでさかのぼったものだが、この際はっきりさせておくのもいいかもしれない。

「そもそも、夢ってなんだろう。人生のゴールだろうか。それとも新しい人生の始まりだろうか」

 マルソ君は、子供の頃の記憶を呼び覚ましてみた。マルソ君の記憶の中で、一番最初に夢が登場したのが、保育園に通園していた頃で、多分三歳か四歳くらいの頃だ。おぼろげに画用紙に新幹線の絵を描いて、将来の夢は新幹線の運転手と書いたことを覚えている。その頃の夢の夢らしさは今の夢の夢らしさとは随分異なっている。

 夢ちゃんは、無知さんと願いさんから生まれた。
 夢ちゃんは、やがて自分の脚で立てるようになった。
 夢ちゃんが夢さんになる頃には難しい言葉をたくさん覚えた。
 だれもが夢さんの話をありがたがり、夢さんの世話をしてくれた。
 そのうち、夢さんは働くのが馬鹿らしくなってきた。
 真面目に働く人々を眺めては、
 「夢がないなあ」と笑っていた。
 いつしか夢さんは自慢話ばかりするようになった。
 そして夢さんはみんなからそっぽを向かれるようになった。
 それでも夢さんは、仕事もせず自慢話も止めなかった。
 とうとうひとりぼっちになった夢さんは、
 誰からもみとられること無く、寂しくこの世を去った。
 やがて、夢さんのむくろを苗床にして、
 たくさんの草が小さな花をつけた。
 人目を引かないその地味な花を人々は努力と呼んだ。
| 昨日の作文 | 01:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ある夜の出来事
 今、俺の住んでいるレオパレスの間取りがどうなっているかというと、玄関を開けるでしょ、すると左手と正面に短い廊下があるのね。

 左手の廊下はすぐ突き当たりになってて、洗濯機が置いてあるんだ。その突き当たりの左手がトイレ。洋式便器でウォシュレットが装備されています。トイレの向かいがお風呂になっててちょっと狭いけど、一人暮らしなら不足はないよね。

 さて、玄関に戻るよ。正面の廊下を三歩ほど行くとキッチンがあります。そこには一見IHと見せかけた電熱ヒーターがあって、まあパスタ茹でるくらいならこれで十分なんだけど、料理でもしようと思うと、とても難儀します。だってまな板置く場所もないんだもの。

 そうそう、キッチンの手前に冷蔵庫がある事を書いとかないとね。料理しないし、お酒も飲まないから、コカコーラぐらいしか入ってないんだけどさ。ちなみに今は肉まんが入ってるよ。冷蔵庫の上に乗っかってる電子レンジで温めて食べるんだ。小腹が空いた時にチンッとね、やるんだけど、取り出さないでおいておくと、ピーピーうるさいんだ。おかげで暖め直すなんて事もないんだけどさ。肉まんくらいでそんなに騒がないでほしいよね。

 そしてキッチンを境にドアがあります。その奥が俺の部屋。まあ少なくとも八畳くらいはあってけっこう快適です。ところでドアを開けて中に入るとすぐ右手の壁に縦長で全身がすっかり映せるくらいの姿見が掛けてある。貼付けてあるのかな、どっちでもいいや。

 その姿見の斜向かいにテーブルがあって、そのテーブルの上にiMacを置いています。机の上には他にガラスの灰皿とか、コーラのペットボトルとか、レオネットの接続ルーターがあって、インターネットにはこれで接続しています。

 ところでさ、さっきから何か背後がスースーするんだけど、すきま風かな。玄関は閉めてちゃんと鍵を掛けてあるんだけどなって、おい!何かがいる。後ろの鏡にうつってる。

 俺は背後の姿見に目を凝らした。そこに、はっきりと少年の姿が映っていた。その少年は緋色の裏地をしたエメラルドグリーンの、丈の長いマントを羽織り、中に白のつなぎを着ていた。ネズミ色の長靴みたいなブーツを履いて、フェンシングで使うようなサーベルを床に突き刺して立っていた。金色でぼさぼさの髪の毛に、幅の広い金のベルトを締めていて、それが小さな王子である事が、俺は一目で分かった。

「ごめんなさい。邪魔するつもりじゃなかったんだ。何か大事な事をしてたんでしょう?僕にかまわず続けて下さい」
「そこで、なにをしてる?」
「なにって、おじさんの事をみていただけだよ」
「わかった。じゃあどうやって入った?」
「入ってきたのはおじさんじゃないか」
「そうだ。君は、どうやって中にはいったんだ?」
「おじさんだって中に入れるのに、おかしな事をきくんだなあ!」

 予想通りだ。きわめて予想通りだ。まるで会話になっていない。

「これはいったいなんていう楽器?」
「楽器じゃないよ。これ、文字を書けるんだ。パソコンさ。iMacだよ」
「鉛筆もなしに文字を書けるの?かわってるなあ!」
「っていうか君、おじさんって言ったね」
「だって、名前知らなかったんだもの」

 そうじゃない。そうじゃないんだ。赤の他人から生まれてはじめておじさんって言われたこのもっとも有り得べき状況の意味を、君はちっとも理解していない。しかし、そんな事を小さな王子に言ったからといって、いったいに何になるというのだろう。

「だれかにお別れの手紙を書いていたの?」
「そんなんじゃないよ、ただの日記だ」
「悲しい事があったんだね」
「わざわざ書いて残すほど悲しい事なんてないさ」
「でも、とってもつらそうな顔をしていたよ」
「俺がか?」
「あたりまえじゃない。他に誰がいるのさ」
「そんなに、酷い顔してたのか?」
「自分の知らない顔を作れるなんて、おじさんやっぱりかわってるなあ!」
「かわってやしないよ。大人になればみんなそうなる」
「顔が自分勝手にかわるなんて、おとなって変だね」
「そうかもしれない」

 そうはいってみたが、小さな王子の言う事の方が正しいような気がしてきた。俺は、自分で自分の顔を知らないふりをしているだけなのかもしれない。

「どんな事を書くつもりだったの?」
「いや、それはもういいよ」
「聞かせてよ、お願いします」
「話したって、君にはちっともわからない事さ」
「そんなの話してみないとわからないじゃない」

 小さな王子にそういわれて、とりあえず話す事にした。仕事を辞めたい事。女の子との出会いがない事。仕方がなく交際している女の事。そして、このまま続けていっていいものかどうか悩んでいる事。

「じゃあ、別れればいいじゃない。なんだ、ちっとも難しい話じゃないや」
「そうもいかないんだ」
「その人の事が好きなの?」
「いや。断じて」
「その人といると何かいい事が有るの?」
「特別いい事があるわけじゃない」
「じゃあどうしてさ?」
「どうしてもだ」
「それじゃわからないよ」
「だから言っただろ。大人にしかわからない悩みってものが有るんだよ」
「子供にわからない事が大人にはわかるの?」
「そういう事だ」
「そんなの変だよ。だったらみんないつまでたっても子供のままじゃないか」

 俺は予想もしなかった反論にしばらく言葉を失った。子供が大人になる過程で、わからない事がわかるようになるとはどういう事なのか。

「たとえば、君はトイレに行くだろ」
「もちろんさ」
「小便をするだろ」
「するにきまってるじゃない」
「その小便がでるところのものには、小便以外の使い方って言うのが有ってだな」
「何に使うの?」
「まあ、最後まで聞け。それは年を取ると成長して全く別の使い道が出来るんだ。それが大人になるって事なんだ。そうなってしまった時の事は子供にはわからないだろう?」
「うん、わからない」
「そういうことが大人にはたくさん有るんだよ」
「そうなった時の事はわからないけど、そういう事が有るのはわかったよ」
「そんなのはわかったうちには入らないんだよ」
「どうしてさ」
「そうなってしまった事より、そうなってしまった時の気持ちの方が、もっとずっと大事な事だからだ」
「じゃあ、その気持ちを話してよ」

 俺は小さな王子を甘く見ていた。いや、子供全般を見くびっていたと言ってもいい。俺こそまさに、大人になればわかる、そういう風に言われて、何かとてつもなく理不尽な気持ちを抱き続けてきたのではなかったろうか。大人になるというのは、わからない事がわかるようになる事じゃなくて、とても些細な事で、もっと大事な事が追いやられていくという事なのではないか。いや、少なくとも俺はそんな風に年を取るようになってしまったのかもしれない。俺はもう一度心を正して、小さな王子と向き合った。そして、とても書き留めてはおけないくらいたくさんの事を夜が開けるまで語り合った。
| 昨日の作文 | 22:28 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
習作「マカロニサラダ記念日」

 チュンセさんとポーセさんは双子の星の男の子と女の子。

 おてんと様が東の空に昇る頃。

 毎日欠かさず、星巡りの歌を奏でてお祝いします。

 それは夜空に輝くの星達の大事な大事なお仕事でした。

 二人は夜が明けるずっと前から、何やら相談をしています。

「チュンセさん、たまには下ネタ以外で、なにかこうぐっとくる話をしてください」

「ポーセさん、毎日逢うたびに違う話をせがまれても、想像力には限界ってものがあるんです」

「だって、マンネリっていうか、手抜きっていうか、あたちの事もうアイちてないんでせう」

「愛って/よく/わからないけど/傷/つく/感じがス・テ・キ!ってそうじゃなくて、僕はどこにでもいる平凡な双子座ですよ。想像力の枯渇です。それに下々の話は種が尽きない、なははんちって」

「もういいでつ。チュンセさんなんてダイチライ!」

 プイッ。

「待ってください。ポーセさん、待ってってば…ああ、行ってしまった」

 今日もまたポーセさんを怒らせてしまったチュンセさん。

 一人でしょんぼり寂しそう。

「…笑っちゃう涙の/止め方も知らない/二十年も生きて/来たのにね…」

 チュンセさんは物思いに耽ると、ついつい薬師丸ひろ子のメインテーマを口ずさんでしまうのです。

 そうだよな、いくらネタ切れだからって、五歳の女の子にハードコアポルノはいささか度が過ぎたよな。反省反省。よし、今度こそポーセさんをハッピーにするとっておきの物語を作るぞ。

 チュンセさんは大決心。

 肩に斜め掛けしたヨシダ鞄から、ほぼ日手帳を取り出しました。

 用紙にトモエリバーを採用しているほぼ日手帳。

 ボールペンはすらすら走ります。

「いい仕事してんなあ…」

 チュンセさんはぶつぶつ独り言をつぶやきながら文字をすいすい書き込んでゆきました。


 じゅうに月くにち すいようび みめい

 サモトちゃんは36さいの男の子です。しんやに目がさめるとおちんちんがなくなっていました。びっくりしました。でもすぐにふとんをかぶってねてしまいました。ヒントはあまのじゃくがユメのなかでいたずらをしたからです。


 7じ20分ごろ

 サモトちゃんはフルチンでかがみの前に立っていました。だけどおちんちんはやっぱりありませんでした。「まいっか」といいました。サモトちゃんはおちんちんがなくても困らないのです。「かわりにオメンコがあったらなあ」と言いました。サモトちゃんははずかしくなってタバコをすい始めました。ようふくを来てカイシャに出かけました。


 7じ47分

 サモトちゃんのお家のうらにスーパーまるもがありました。いとうえんの自動ハンバイきの前で考えました。おしっこがしたくなったらどうしよう。「まいっか」と言いました。シナモンカプチーノを買ってカイシャに行きました。


 じゅうじ50分

 サモトちゃんはいっぱいはたらきました。でもきゅうに思い出しました。おしっこがしたくなったらどうしよう。おしっこのことばかり考えたので、せかいぢゅうで一番おしっこのことをかんがえました。


 ごご3じ

 おひるごはんはおとなが大好きなお茶をひとくちものみませんでした。だからおしっこをしたくなりませんでした。だけどうんこがしたくなりました。ベンジョにいきました。「わかったぞ」と大きな声で言いました。おしっこはうんこといっしょにおしりの穴からでていきました。


 ごご6時

 サモトちゃんはザンギョウしました。サモトちゃんはお父さんよりいっぱいはたらきました。「おつかれさまでした。さようなら」サモトちゃんはいそいでお家に帰りました。


 ごご8時

 サモトちゃんはエロ本を読みました。いつもおちんちんをさわりながら読んでいたので、今日はあんまりおもしろくありませんでした。「チムポがないのに生きていたってしかた無い。ああつらいつらい」サモトちゃんは悲しくなってふとんの中で泣いていました。


 しんや

 サモトちゃんは目がさめました。なんだかカゼをひいてしまったようです。サモトちゃんはちり紙ではなをチーンとかみました。「なにか変だぞ」サモトちゃんはふしぎになりました。もう一度ちり紙ではなをチーンとかみました。「やっぱり変だぞ」サモトちゃんははなをいっぱいかみました。


 チーンチーンチーン


「これはすごいぞ」サモトちゃんがはなをかむと、とても気持ちが良くなりました。


 チーンチーンチーン

 

 わるいことをしているようなへんな気持ちになりました。


 チーンチーンチーン


 だれかにいじめられているようなはずかしい気持ちになりました。


 チーンチーンチーン


 だれかを泣かしているようないじわるな気持ちになりました。


 チーンチーンチーン


 ああはずかしい。


 チーンチーンチーン


 やいどうだ。


 チーンチーンチーン


 いやいやいや。


 チーンチーンチーン


 もっかいもっかい。


 チーンチーンチーン


 うふふ。


 チーンチーンチーン


 ダメダメダメよ。


 チーンチーンチーン


 でへへ。


 チーン


 とうとうちり紙がなくなってしまいました。サモトちゃんのはなはトナカイみたいにまっかっかのほっかほかになりました。「わかったぞ」サモトちゃんは人さし指をはなの穴に入れました。「こんなことってあるかしら」はじめはそおっといれました。「チムポなんてめじゃないや」はなはぐちゅぐちゅぬれています。「これはどうかな」はなの中の丸いでこぼこをかき回しました。「うひゃあ」サモトちゃんはゆうきを出して、指を最後まで入れました。「ひいいいいいい」サモトちゃんはキチガイのような声を上げました。「あ、あ、いく、いくう、ひ、く、ヒック、ハックショーン!」サモトちゃんは大きなくしゃみをしました。


 じゅうに月くにち すいようび みめい

 サモトちゃんはふとんから飛び起きました。いそいでぱんつの中に手をいれました。おちんちんはついています。「なんだゆめか」サモトちゃんはすこしがっかりしました。パンツから手をだすと、とうめいなノリが指にくっついていました。「わあ、くさい」サモトちゃんは36さいの男の子です。おとながとってもはずかしいムセイをしてしまいました。「やきがまわっちまったぜ」サモトちゃんはちり紙で手をふきました。じゅうに月くにちのすいようび。今日はサモトちゃんのとってもはずかしいマカロニサラダ記念日です。


「なんだ、夢オチか…」

 推敲に没頭していたチュンセさんはあわてて振り返りました。

 チュンセさんの肩越しにポーセさんの顔がありました。

 ポーセさんが戻ってきた事に気づかなかったのです。

 ポーセさんはチュンセさんのほぼ日手帳を覗き込んでいたのです。

「あ、これはちがうの。とっても書き心地がよいものだから、つい手が滑ってしまったのです」

 チュンセさんは真っ赤になって言い訳しました。

「チュンセさん、もうすぐおてんと様がまいります。ぐずぐずしてたらおいてっちゃうぞ」


 チリンチリンチックチック チリンチック トーン


 ポーセさんは夜空をひとっ飛びに駆け上りました。

「あ、まって、今すぐ沓をはきますから」

 チュンセさんはあわてています。

 星のかけらで出来たナイキのエアマックスエボリューションを穿くと、チュンセさんは急いでポーセさんの後を追っかけました。


 チリンチリンチックチック チリンチック トーン


 雲の階段をひとっ飛び。


 チリンチリンチックチック チリンチック トーン


 天の河原をひとっ飛び。


 あっという間に南十字星が輝くオーケストラピットに到着です。

 チュンセさんとポーセさんは、なんとか間に合ったみたい。

 きっりきり きっりきり

 アンタレスさんがバイオリンの音を確かめています。

 どんどんしゃん どっどどしゃん

 デネブさんがティンパニとシンバルを上手に鳴らしています。

 チュンセさんとポーセさんは鞄から横笛を取り出しました。

 ぴろ ぴろ ぴろろ ぽんぽこ ぷう

 みんなの準備が整うと、オーロラのどんちょうがあがり始めました。

 夜空の音楽隊はいっせいに息を整えます。

 東の空が、油の浮かんだ水たまりみたいに明るくなって参りました。

 指揮棒を持ったアルタイルさんが手を振り下ろしました。

 すると夜空ににぎやかな合奏が響き渡ります。

 星明かりを身につけた海の潮騒さん達が合唱を始めました。


 (Allegretto)

 あかいめだまのさそり ひろげたわしのつばさ

 あおいめだまのこいぬ ひかりのへびのとぐろ

 オリオンはたかくうたひ つゆとしもとをおとす


 アンドロメダのくもは さかなのくちのかたち

 おほぐまのあしをきたに いつつのばしたところ

 こぐまのひたひのうへは そらのめぐりのめあて


 東の空はすっかり茜色に明け染めています。

「おつかれさまでした。さようなら」

 演奏を終えた星達はそれぞれ自分のお家に帰っていきます。

「チュンセさん」

「どうしたの、ポーセさん」

 ポーセさんは笛を鞄にしまいながら言いました。

「さっきのチュンセさんのお話、あたちなんだかムラムラしちゃった」

「え?」

「今日のシエスタ、ちゅきあってあげてもいいかも」

「ほ、ほんとう!」

 チュンセさんはうれしさで顔が破裂しそうに赤くなりました。

 やれ困った。来月の小遣いまでまだ半分以上もある。

 そうだ、お年玉を前借りしよう。ご休憩くらいなら何とかなるぞ。

 本当は頭の中でこんなふうに計算をしていたのです。

 もちろん、驚きではち切れんばかりの笑顔を保ちながら。

「それじゃあ、午後三時に勉強部屋でまってゆ」

「うん!」

「さようなら、チュンセさん」

「さようなら、ポーセさん」

 ポーセさんはお家へ帰っていきました。

 チュンセさんは鞄のふたを閉じ、スキップをして家路に向かいます。


 チリンチリンチックチック チリンチック トーン


 チリンチリンチックチック チリンチック ドーン


 ドドーン


 完

| 昨日の作文 | 22:37 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ナイフ投げの話
ある村にナイフ投げの名人がいました。
村のはずれの小さな家に一人で住んでいたのです。
ナイフ投げの食事はとても質素なものでした。
興行のあった日に大きなパンの塊を買っては、毎日少しずつナイフで切って食べていました。
パンをきるとき、床にはパンくずが落ちました。
よく切れるナイフでしたが、それでも芥子粒のようなパンくずが散らばっていました。
ナイフ投げはナイフの扱いしか知らなかったので、部屋の中で鳥を飼うことにしました。
鳥はパンくずをきれいに食べました。
その代わり、時折部屋の中に鳥の糞を落としました。
ナイフ投げは、鳥が糞を落とすたび、ナイフで刺して鳥を食べてしまいました。
ある日、一羽のカナリヤがナイフ投げの小屋に現れました。
虫の知らせでも聞いたのか、パンくずを食べにやってきたのです。
カナリヤはパンくずを食べると、自分から鳥かごの中に入りました。
ナイフ投げは不思議に思いましたが、そのままカナリヤを飼うことにしました。
カナリヤは頭が良かったので、パンくずを食べても小屋の中では決して糞をしませんでした。
ナイフ投げもカナリヤのことがすっかり気に入るようになりました。
その年、村には穀物の収穫が少ししかありませんでした。
パンの値段が上がり、ナイフ投げの食べるパンは日に日に小さくなっていきました。
それでも、ナイフ投げはいつもと同じだけパンくずを落としてあげました。
けれども次の年、とうとう村に飢饉が襲いました。
ナイフ投げにはカナリヤの他に食べるものがなくなってしまいました。
ナイフ投げは決心してかごの中のカナリヤを捕まえました。
ナイフ投げが首をひねろうとしたとき、カナリヤは人間の言葉でこう言いました。
私はいつもあなたの小屋を綺麗にしてきました。
だからあなたは蚤や穢れや悪い病気に悩まされずに、今日まで過ごして来れたではありませんか。
私を食べたところで、あと何日生きながらえるというのでしょう。
それでも私を食べるというのであれば、どうか最後に別れの歌を鳴かせてください。
ナイフ投げはたいそう不憫に思い、カナリヤを籠に戻してやりました。
カナリヤは涙を流しながら美しい詩を歌いました。
カナリヤの歌が終わらないうちに、ドアを叩く音がしました。
ナイフ投げがドアを開けると、王宮に使える従者が立っていたのです。
従者は美しい歌声の主を見せるようナイフ投げに命じました。
ナイフ投げが従者にカナリヤを見せると、従者は喜んで言いました。
これこそ、私が探していたカナリヤです。
お城から迷い出て、よもや生きてはいまいとあきらめていましたが、探しあてることが出来たのは神の導きに違いない。
こうして、ナイフ投げとカナリヤは王宮に召されることになりました。
カナリヤが言葉を話すはずはないとお思いになるかもしれません。
もしカナリヤが言葉を話さなければ、あなたの食べ残したそのパンは、いったい誰が切り分けたものだというのでしょう。
そう諭された幼い王子様は、自分の取ったパンを残さず綺麗に食べました。
王子様が落としたパンくずは、今もカナリヤがついばんでいるという事です。
| 昨日の作文 | 10:57 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
寡黙な男の話
寡黙な男がいた。
男は出向先で土木建築機械の受発注システムを開発する仕事に携わっていた。
一人の上司と一人の同僚と五人の部下が一緒だった。
セキュリティ対策のため作業用のパソコンは全て出向先の会社が用意した。
客先の総務の女が作業場所のパーティションや作業用のパソコンを管理していた。
小柄で品のある女だった。
知性を帯びた声でいつもはきはきとしたしゃべり方をしていた。
すれ違うときには必ず気持ちの良い挨拶をした。
女はたびたび男のいる部署に出入りした。
あるときは発行されたメールアカウントを知らせに来た。
あるときは提供されたパソコンの型番などをメモに取っていた。
あるときは誰だかの旅行土産をお裾分けにやってきた。
女は用事を済ませた後もよく何か言いそびれたようにして立ち去った。
時には一言二言話しかけることもあった。
普段は口数の少ない男もその女に対しては気の利いたことを返すように心がけていた。
男はその口数ほどには女に対する熱情は少なくなかったのだ。
そうやって三カ月が過ぎようとしていた。
あるとき、たまたま帰りのエレベータが一緒になることがあった。
お疲れ様ですと女は相変わらず元気の良い挨拶をした。
男はお疲れ様ですとだけ答えてしばらくあれこれと考えた。
エレベータは七階に着いた。
女に促されるまま男は先に乗った。
女が乗りドアが閉まると男は聞いた。
「一階で?」
「はい、お願いします。」
エレベータが動き出した。
男は思い切って尋ねてみることにした。
「最近出たシンディーローパーのベストアルバムって何てタイトルだっけ。」
「え?」
「シンディーローパーのベストアルバムだよ。知らない?」
「ええ。」
「何とかベストって名前なんだけど、超だったか、スペシャルだったか、なんかそんなたいそうなのが頭につくんだけど。」
「え、なんだろう。」
「超のさらに上って何だっけ?」
「究極かな。」
「それだ!究極ベスト。ありがとう。すっきりした。」
男は必死だった。
幸い女の反応はまずまずのようだった。
エレベータは途中でどの階にも止まらず一階に着いた。
男は三角が背中合わせになったボタンを押しながら話を続けた。
「今日少し時間ある?」
女はエレベータを降りて男を待った。
「十時に人と会う事になってるんだけど、それまでまだ時間あるし一緒に食事でもどう?」
女はあまり間をおかずに答えた。
「いいですよ。」
よし決まり。これで行こう。
男がそう決心した時、エレベータが七階に到着した。
扉が開くと女がそそくさと中に入った。
男も女に続いてエレベータに乗った。
やや遅れて同僚があわてて乗り込んできた。
ありきたりな挨拶を交わした。
エレベータは途中で二回ほど止まった。
| 昨日の作文 | 13:15 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
デカメロン・アンド・シガレッツ
昨日紀伊国屋で「空気の読み方」という本を見つけた。
手に取るのに勇気が必要だったが戻すときにはもっと必要だった。

先週池袋で思い切ってナンパした。中国人の女の子だった。
メアドを交換した。翌日早速メールが来た。
「あなたはパスクンは安いといいました。私にパスクンあげますか。」
もうメールしないでくれと返事を返したら、Off course!と返ってきた。

死にたい、と思えたらなと思った。

ネットのニュースで福山雅治がスーパーモデルと並んで映ってる画像があった。
福山より背が高かった。
福山より顔が小さかった。
姉に「スーパーモデルに生まれたいよな」といったら、別に、と答えた。
スーパーモデルにはスーパーモデルの苦労がある。
妙に納得した。

最近、タバコを吸うようになった。
今朝も早く家を出て、会社の近くの公園で『デカメロン』を読みながらタバコを3本吸った。
人生がちょっと楽しく思えそうな気がした。
| 昨日の作文 | 11:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
矢継駿の社長ブログ
My Do!矢継です。

いきなりだけど。

人の本質は変わらない

よく聞くよね。

俺もそう思ってた。

今の会社始めるまでは。

だけどそんなの真っ赤な嘘

今日はそんな話。

みせコムの新入社員はみんな一度は生まれ変わる

もちろん人によって個人差はある。

でも遅いやつでも一年以内に変わる。

もうこれは絶対

出来るヤツが正当に評価される。

そんなの耳にタコだよね。

でもそれが自分のことだと思ってるヤツは少ない

歩合制という場合、大抵はピラミッド型をイメージする。

収入が多いやつほど小数になると思っている。

まずそこが変わる

徹底的に変わる

なぜ変わるか。

みせコムは逆ピラミッド型だと解るから。

出来ないやつの出来なさの責任が上に吸い上げられる。

誰もいままでそんな会社で働いたことがなかったからだ。

そんな簡単なことが解ってる経営者が少なすぎる。

俺は十年かけて理解した。

決してうぬぼれてるわけじゃない。

昨年度の査定でも手取りの少ないやつほど数が少ない

これ嘘みたいなほんとの話。

天辺にいるやつが増えても大丈夫。

店舗を拡張して社内独立を実現する。

だからみせコムはもつ。

そして年々確実に収益を上げてる。

そのことを体験したときに変わらないやつはいない

部下は個人だけど上司はチームになる。

問題の多いやつほど上に上がっていける。

部下の悩みを聞くやつほど出世する。

人の痛みがわかるやつほど会社を動かせる

こんな当たり前なことが仕事を充実させてる。

仕事が充実してるヤツはプライベートでも成功してる

だから会社は面白い。

本気で変わりたかったら人は変われる。

でも誤解しないで欲しいのは

変化したことも含めて自分らしさって事だ。

今日も最後まで読んでくれて

My Do!おおきに

起業家ブログ
| 昨日の作文 | 13:28 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ラブホテル
ホテルに泊まったんですよ。
そこはラブホテルだったんで、随分怪しまれましたがね。
連れは後から来るって言ったら妙に納得しましてね。
それで疲れてたから部屋に入ってすぐにベッドに横になったんです。
そしたらチャイムが鳴りましてね。
お連れの方が来ましたよって言うんです。
おかしな話ですよ。
ベッドから出るのも億劫だったもんで、大声で言ったんです。
さっき電話で話してたからまだ着くわけがないってね。
そしたらそんはずはないって言うんですよ。
めんどくさくなったんでさっさと済ませようと思ってドアを開けたんです。
そしたらドアの前に女が立ってましてね。
そうです。受付にいたのとは別のやつです。
どこにいるんだって言ったらもう帰ったって言うじゃありませんか。
いい加減にしろって言ってドアを閉めようとしたんです。
そしたらドアをつかんで預かりもんだって携帯電話を差し出してきましてね。
それがものすごい馬鹿力でね。
そんなもの知らないって言ったんですが、さっき電話してただろうって言うんですよ。
ちょっと気味が悪くなったんで見てみたんですよ。着信履歴をね。
そしたら確かに俺の使ってる番号が残ってましてね。
そりゃ驚きましたよ。
だって日付が昨日の同じ時間じゃないですか。
その時分っていやあ、俺があの男を殺るすぐ前ですよ。
火をつけてね。車ごと燃やしたはずなんですがね。
それで恐ろしくなったんでこうやって訪ねてきたんです。
ええ、これがその男の携帯です。
| 昨日の作文 | 13:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
マンション
マンションに一組の入居者が入った。
髪の毛を耳の周りでに綺麗に刈り込んだ青白い顔をした男で、同じくらいの年頃の女が一緒だった。
マンションは分譲向けに建てられた立派なものだった。
天井は高く、壁は丈夫だった。
フローリングの床は飛び跳ねても靴下のすれる音しかしなかった。
室内は静かで堂々としていた。
ベランダの長いカーテンを開けるまで、外の天気に気がつかないほどだった。
近々完成するはずだった鉄道の敷設が頓挫してしまい交通は不便だった。
買物はシャトルバスで私鉄のターミナルまで出掛けねばならなかった。
それでも、二人にとっては申し分のない物件だった。

女は休みの日の朝にほんの一時間ほど楽器を弾いた。
弦が何本も張ってある古い楽器だった。
ひざに抱えて嬰児の背中をたたくように優しく爪弾いた。
家具の少ないリビングは心地よい反響を響かせた。
女が奏でる淡い音色で男は眼を覚ました。
男はテーブルに腰掛け、分厚い教典を一ページめくった。
霊能者が冥界から死者の霊を誘い出していた。
遠い異国の地で果てた戦士の霊だった。
犠牲の動物から流された血を啜るとこの世に生きていた頃の記憶を取り戻した。
犠牲の牡山羊は戦士の妻が用意した。
死者は泣きながら妻に別れを告げた。
口の端には血を滴らせていた。
男は栞をはさんで教典を閉じた。
リビングで女と一緒に朝食を取りながら男は女にこういった。

会社でメールをスキャンした。
専務が開発部のみんなに当てたメールだ。
メールにはアンケートが添付されていた。
ウィルスは検出されなかった。
くだらないアンケートだった。
すぐに返信した。
僕は不安になった。
専務が首をくくるんじゃないかと心配した。
それよりも気がかりなのはみんながそれを望んだかも知れないってことだ。
くだらないアンケートだった。
すぐに返信した。
僕のメールもスキャンすればいい。
僕も首をくくるかもしれない。
ところで僕のロープはどこに引っ掛ければいいんだ?

何なのそれと女が聞いた。
詩だと男が答えた。
どこがどんな風に詩なのと女が聞いた。
改行が多いところだと男が答えた。
改行してたの?
全部改行してある。
女は笑った。
男も笑った。
| 昨日の作文 | 12:18 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
狸男の小説
狸男は会社をやめて小説を書き始めた。
狸男にとって書くことは自分の無知を知ることだった。
小説を書くことで世界の厚みを感じることが出来た。
何より、狸男の書いた話は彼を笑わせた。
世界のへそから吹き出してくるようなそんな笑いで満ちていた。

ある日の新聞に彼の書いた小説を読んで笑い死にした政治家のニュースが載った。
狸男は驚きあきれたが、やっぱり笑えて仕方がなかった。
その後も狸男は書き続けた。
指が腕より長い男の話や、地球よりでかい尻を持つ女の話や、自分の胃袋に住んでる食いしん坊の話を書いた。

そんな狸男の元に一人の娘が現れた。
娘はたいへん怒っていた。
狸男が理由を尋ねると娘は狸男が自分の笑いを盗んでいると言うのだった。
狸男は娘の頭がおかしいのだと思って相手にしなかった。
実際娘は少し頭がおかしいらしかった。
狸男の小説に笑いを全部奪われて、普段は怒るか泣くことしか出来なくなったというのが娘の言い分だった。
娘があまりにもしつこいので、狸男はその場で思いついた笑い話を書き付けたメモを手渡した。
娘はそれを読むと笑いながら帰っていった。

あくる日には、肉屋の主人が泣きながらやってきた。盗んだ笑いを返せという。
次の日には収税人が、また次の日には居酒屋の女主人がという具合に、毎日誰かがやってきた。
戸口で泣いたり怒ったりしては、笑い話を受け取って帰っていった。
とうとう話のネタが尽きた狸男は、恋愛小説を書くことにした。
そしてそれ以来、狸男の家に訪ねて来るものはいなくなった。
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