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聞いてくれ、Bro。
すまん、うっかり婚活してた。

わははははは

準備に抜かりはなかった。

フリーメールでアカウントをとって、すぐに反応できるように携帯への転送サービスにも登録した。

守備は完ぺきだった。

そして、いわゆるミーツ系サイトに出陣。

くるわ、くるわ、デンジャラスなお誘いメール。

「付き合って下さい」なんて穏当なものから、「今すぐお会いできますか」「私に○○して下さい」中には、「必ず結果出します!」なんてのもあった。

もちろん写真付きだ。本上まなみ風、松嶋菜々子風、セレブ系から小悪魔系までよりどりみどりだ。

その時は俺は何をしていたか?

プロフィールも更新せずに、サイトの利用規約を熟読していたのだ。

ふざけるんじゃない!

登録して五分もしないうちに退会手続きをしてやった。

性懲りもなく、無料と謳ったサイトに登録、退会を繰り返した。しかし無料なんてのは見せかけで、登録完了してログインすると、それまでサイトのどこにも存在しなかった、ポイントなんて項目がさりげなく姿を現すのだった。

ネットに渦巻く私利私欲に吐き気を催しながら、暗黒街をさまよい歩いた挙げ句、気が付くとお見合いサイトに登録している俺がいた。

今、俺のフリーメールアカウントの迷惑フォルダには夥しい数の糞メールがあふれていることだろう。そんなの知ったことか。

仕方ない、お見合いサイトだろうが何だろうがミーツ系には違いない。

俺は、とあるサイトの良心的なシステムに一抹の安らぎを見いだしたのであった。

それは気に入った相手に申込をしてメールが開通して初めて料金が発生する仕組みだった。

女からの申込?そんなものは一つもない。利用規約に目を通し終えた俺は、プロフィールに職業、住所から年収まで、真実ありのままを書いた。

そして、もちろん申込はない。俺のプアなプロフィールでそんなものある訳がない。

正真正銘のミーツ系だ。こちらから出て行かなければ女と言葉を交わすことすらできない。それがすなわち出会いという奴だ。

検索機能を使って、女のカタログを眺めていた俺は、現実を眺めていたことになる。

数値と顔写真が幅を利かせるその現実の前に立ち竦んでいた俺を救ったのは、そのサイトの日記機能だった。

日記には共感ボタンなるものがついていて、そいつがクリックされると履歴が残り、それを辿って相手のプロフィールに飛んでいける親切な機能まで付いていた。

俺は日記を書いた。300文字という制限と格闘しながら、ほぼ毎日、日記を書きなぐった。

そんな事を続けているうちに、少ないながら俺の日記に共感ポイントなるものが付くようになった。

決して多くはなかったが、何人か同じ女が共感を示しているようだった。

俺は自分を信じた。そしてそのわずかな女たちに共闘意識すら覚えた。

そして、一ヶ月、俺は意を決して、続けて共感を示してくれた女の中で、歳が一番近い女に申込メールを送る事にした。

申込メールに書き込めるのはたったの40字だ。俺は一晩頭をひねって渾身の文章を送った。

相手は34歳、身長も年収も俺のちょうど一回りほど下の女で、仮にN子と呼ぶ事にしよう。

N子の返事はどうだったか?

OKだったのである。しかも送ってものの30分もしないうちに返事が返ってきたのである。

勝った。

俺はすぐさまメール開通の手続きを済ませ、クレジットによる支払いも済ませた。以下、俺とN子のやり取りの概略を示す。

N子「他県ですがいいのですか?」
俺 「もちろん」

東京ー大阪間の遠距離恋愛も経験済みの俺には、そんな距離とるに足りないものだった。俺はイニシアティブをつかんだようだ。

N子「そうじゃなくて、どうして私なんですか?」
俺 「?」
N子「日記に共感したから?」
俺 「まあ、きっかけであった事は否めません」
N子「日記に共感しても、その人と付き合うかって事は別のような気がしますが」
俺 「・・・」
N子「気に触ったらすみません。私に申込まれた理由を知りたかったので」
俺 「それはもっともな疑問だと思います」

俺は考えた。日記の共感がきっかけにすぎない事に偽りはない。それをきっかけにして俺はN子の書いた日記をすべて熟読したし、第一俺のへんちくりんな日記に続けて共感を示してくれるってだけで、一つの障壁は超えられたのではないだろうか。

俺は、彼女に申込んだ理由を、納得が得られるように分かりやすく噛み砕いて、メールにあげ連ねた。書きながら自分がとてつもなく馬鹿に思えてきたが、もう後には引けなかった。

N子「東京にもたくさん女の方が登録していらっしゃいますよね」
俺 「・・・」

彼女は徹底的に正しかった。しかし、俺は自分の申込動機も俺にとっては十分に正当だと信じている。俺は少ない候補からでも、最終的に二人に絞り込み、最後にN子に、ただN子だけに申込をしたのである。もう一人の女だって、歳さえ五つも上でなければ、俺には理想的に思えたのに。

ただ、それは独りよがりな正当化である事も十分に承知してはいた。俺は消え入りそうな声(文字)でやっとこう答えた。

俺 「もし、N子さんが二人いて、一人が東京に住んでいたら、東京のN子さんに申込んでいたと思います」

泣きたかった。でも泣かなかった。涙の代わりに、返信を出してすぐ、パソコンの電源を落とした。

翌日は、やり場のないいらだちを抱えながら、仕事の重圧に耐えていた。上司はことあるごとに俺の仕事の出来とプロパーの仕事の出来を比べ、圧力は日々増していくばかりだった。

こんな辺境の地に味方は一人もいない。こんな仕事より俺にはやるべき事がある、なんて言える立場ではなかった。転身赴任と同時に東京の家を出て行った俺が、今ここを追い出されたら帰る場所なんてないのだった。

仕事から帰り、Macを起動した。サイトに接続すると、N子から昨日の返事が届いていた。

N子「深く考えない事にします」

それ以来、俺はN子と文通をしている。軽いノリで始めたつもりが、このまま結婚に至る可能性もわずかながら否定できなくなってきた。

だからどうだって言うんだ。

そんな事は神のみぞ知るである。
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